フリードマン 2020 8 2

「貨幣理論は、日本庭園のようなものである」

書名 ミルトン・フリードマンの日本経済論
著者 柿埜 真吾  PHP新書

 経済学者のフリードマンは、「日本通」の学者だったのに、
なぜか、日本では、人気がありません。
日本人は、フリードマン経済学を誤解しているかもしれません。
 しかし、フリードマンが「日本通」であろうとなかろうと、
資本主義国に生きていく以上は、
フリードマン経済学を知っておく必要があります。
 経済は、需要と供給で決まります。
たとえば、今は、新型コロナウイルスの流行で、
旅行を避ける人が多くなっています。
 こうなると、旅行サービスという「供給」は変わらないのに、
観光という「需要」は、減少してしまいます。
 経済というものは、需要と供給が一致する方向で動きますので、
このような場合は、長い期間でみれば、
旅行業者の廃業で供給が減るか、
ウイルス感染の収束によって需要が戻ってくるか、
どちらかになります。
 ここで、供給面において、
宿泊料金という価格が下がれば、需要が増えるかもしれませんが、
そう簡単に宿泊料金は下げられないでしょう。
これが「価格の下方硬直性」というものです。
 ところで、経済というものは、
需要と供給だけで動いているわけではありません。
 たとえば、政府が国民に対して、
旅行資金として、一律10万円を配布したら、どうなるか。
 これでは、金額的に小さいので、
貯蓄に回る可能性が高く、
観光業界に対しては、影響が少ないかもしれません。
 そこで、国民に対して、
一律1億円を配布すると、どうなるか。
 これで、観光業界は復活するでしょうが、
経済は、インフレ(物価上昇)となるでしょう。
 このように、経済における貨幣の流通量は、
大きな影響がありますので、
貨幣の流通量を見ながら、経済を考えることは大切なことです。
 ところで、今、日本では、「超低金利」と言われていて、
「貯金していても、利子がつかない。
外国では、高金利なのに、日本は、低金利だ」と嘆く人が多いと思います。
 はたして、日本は低金利で、外国は高金利なのか。
たとえば、外国では金利が5%もあって、実に、うらやましいと思う。
しかし、インフレ率が7%になっていたら、どうでしょうか。
 このような場合は、名目金利は5%あっても、
実質金利は「-2%」のようなものですので、金利が高いとは言えないのです。
 たとえば、あなたの給料が3%も減ったので、実に悲しくなった。
しかし、物価はデフレで5%も下がっているとなると、
あなたの給料は、実質的に2%も上がっていることになります。
このように経済を見る時は、「名目」と「実質」で見ることが重要です。
 「貨幣理論は、日本庭園のようなものである。
それは、多様性から生まれる美的統一性をもっている。
 どちらも、たくさんの異なった観点から吟味し、落ち着きを払い、
徹底的に研究した時だけ、十分に評価することができるものである。
 どちらも、全体から独立して楽しめる要素を持つが、
それらを完全に理解できるのは、全体の部分として見た時だけである」
(ミルトン・フリードマン)
























































トップページへ戻る